採択年度:2022年度
課題名: 音響放射センシングで植物体の水分動態を把握する作物栽培ソリューションの事業化
研究代表者:埼玉大学 蔭山 健介
- 研究・事業化の背景
植物体内の微小な泡が発する音を感知
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- 植物は根から葉に水を引き上げていますが,植物体内で水分が移動する際に,小さな泡が発生して音響放射(アコースティック・エミッション,以下AE)が生じます。この微小なAEを検出するセンサの研究を進め,エレクトレットと呼ばれる帯電した物質を用いることで植物のAEを検出できる低コストのセンサを開発しました。開発したセンサは,触れるだけで微小なAEを微細にとらえることができるため,新たな生物のAEセンシング技術となりうると感じています。まずは,トマトのような水やりの管理が重要な作物栽培において植物の水分状態を診断する技術として事業化できるのではないかと考えました。また,このセンサは植物などの生体や水中など軟らかい物質を伝わる音響の検出に優れていることから,これまで注目されていなかった様々な生物が発するAEのセンシングにも目を向け始めました。
- 取り組みの概要
作物の水分状態をリアルタイムで監視
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- ハウス栽培などの作物栽培施設で,トマトやキュウリなどの茎に容易に取付られる低コストのセンサを開発して,リアルタイムでこれらの作物のAEが発生する様子を可視化できるようになりました。これらの作物のAEセンシングにより,AEデータは作物の生育状態,特に水分状態と深く関連していることが明らかとなっています。また,ルートレック・ネットワークスが提供している自動灌水施肥サービス(ゼロアグリ)に統合したビジネスモデルの確立にも取り組んでおり,AEデータを用いて植物の水分状態を監視することで作物栽培に役立つ技術を開発して実証試験を行っているところです。また,ミカンなどの果樹にも取り付けてAEを検出できるようになり,果樹栽培にも役立てる技術へ進化させているところです。
- 今後の展望
試験用途から栽培支援ソリューションへ
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- 植物の水分状態に関する情報をリアルタイムで得られる新たなセンシング技術として,試験研究用途としてこれまでにない植物の水分情報を得られる事業を開始します。そして,トマトやキュウリのような灌水制御が重要な作物に適した栽培支援ソリューションへと発展させたいと考えています。さらには開発したセンサは,1 Hzから300 kHzまで非常に幅広い周波数をカバーしているため,様々な生物が発するAEを検出できる可能性があります。そこで,現在は藻類やミツバチなどの生物のAEセンシングにチャレンジしており,作物栽培以外でもAEセンシングの事業化が有望な生物培養分野を見出したいと考えています。
- メッセージ
- 開発したセンサは,触れるだけで微細な音や振動を検知できることからタッチアコースティック・センサと名付けました。今後,タッチアコースティック技術を使って,植物の動きをとらえて栽培を支援するしくみの事業化を進めます。将来的には,農業に限らず様々な分野で生命の音を感じて多様な生態系と人をつなぐ社会の実現を目指します!皆さんも一緒に,様々な生物の音をキャッチして役立てる事業にチャレンジしてみませんか?
- タッチアコースティック・センサについてもっと知りたい・使ってみたい事業者,試験研究機関の方は、お問い合わせフォームもしくはTeamページ(埼玉大学)記載の連絡先よりご連絡ください。
タッチアコースティックセンサについて