採択年度:2021年度
課題名: 農林業活性化のための未利用系バイオマス資源からのテレフタル酸ならびにポリエステル製造技術の事業化
研究代表者:神奈川工科大学 准教授 仲亀 誠司
- 背景
未利用系バイオマス資源を活用する重要性と課題
地球温暖化を抑制するためにCO2排出量の削減が求められている中、再生可能資源であるバイオマス資源を利用する重要性が高まっていくと予想されます。一方で、非可食性バイオマス資源の多くはエネルギー(熱、発電用途)として利用されるに留まっており、含有成分を有用物質へ変換して、化石資源由来の化合物の代替として利用する技術(マテリアル利用技術)の多くは研究開発段階です。ポリエステルの原料であるテレフタル酸を化石資源からバイオマス資源に転換する研究開発が世界的に行われていますが、多量のエネルギーや化学薬品を使用するという課題があります。また、これらの方法は製造工程数が多く、設備費が高くなるという問題があります。我々はそれらの課題を解決しうる技術開発を行っています。
- 取り組みの概要
未利用系バイオマス資源による化石資源由来物質の代替に取組む
現在本プログラムで取り組んでいる技術は、テレフタル酸の中間原料のp-トルアルデヒドを生産する微生物を用いて、発酵法によりテレフタル酸の生産を行うものです。生物学的手法を用いるため、温和な条件でテレフタル酸を製造でき、製造時のエネルギーの削減が見込まれます。また、バイオマス資源由来の糖からp-トルアルデヒドを1工程で製造することができるため、テレフタル酸の製造工程数を少なくでき、設備費を安くできる可能性があります。テレフタル酸の原料には未利用系バイオマス資源を活用することで、農村地域の活性化を図ることも目指しています。
- 今後の展望
地球温暖化抑制と農村地域の活性化に貢献できる事業化を目指す
現在取り組んでいる「未利用系バイオマス資源からのテレフタル酸ならびにポリエステルの製造」を事業化に推し進めるために、基礎的な知見の蓄積を行うとともに、スケールアップの検討や具体的なビジネスモデルの構築も行っています。地球温暖化抑制と農村地域の活性化に貢献できるように、頑張っていきます。
- 本プログラムについて
専門性の高い支援人材による、充実した伴走支援が魅力
自分が取り組んでいる研究内容を、できるだけ短い期間で実用化につなげるには、どのようなプロジェクトが最適なのかという視点に基づいて本プログラムに応募をしました。本プログラムは伴走支援というイベントがとても充実しています。例えばプロジェクトマネージャーの方や、現在各業界の第一線で業務をされている経営人材候補の方が、現在本プログラムで取り組んでいる研究を事業化につなげるための最適解について、一緒に考えて提案をしてくださいます。また、スタートアップの経営者、弁護士、弁理士の方々などが、事業化で大事な視点について講演をしてくださるため、事業化に向けて視野が大きく広がります。
- メッセージ
本研究に一緒に取り組んで頂き実用化を目指して頂ける研究者、技術者、学生の方々、ならびに研究内容に興味をお持ちの企業の方は、ご連絡を頂きたいと思います。
未利用系資源からポリエステルを製造する仕組み